パラブラ映画部

2021-07-16

パラブラ映画カフェ レポート『まひるのほし』と考える「生活」と「アート」

画像
映画を語り合って、映画がさらに好きになる、そんな「場」が「パラブラ映画カフェ」です。
今回語り合う作品はパラブラ映画部で配信中の『まひるのほし』。
ゲストに撮影協力・出演をされた関根幹司さんをお呼びしました。
司会はパラブラ代表の山上庄子、ほか4名の方にご参加いただき、映画の感想を共有していきます。

鑑賞作品『まひるのほし』

(山上)今回ご覧いただいた作品は1998年、今から23年前に制作された『まひるのほし』。数々のドキュメンタリー映画を撮った佐藤真監督が、福祉施設である信楽青年寮や神戸のすずかけ作業所、そして関根さんがいらっしゃった工房絵(かい)。この3ヶ所を中心に取材して撮られた作品になります。
当時はバリアフリー版を制作されないまま公開されているんですけれども、改めて皆さんに見ていただけるようにと思って、一昨年にPalabraで字幕と音声ガイドを制作した作品でもあります。

『まひるのほし』 オンライン配信はこちら

画像

この『まひるのほし』というタイトルは、映画にも出演したはたよしこさんが付けられたそうです。私達の目には昼間の空に星が見えないけれども、実際にはそこに一つ一つの星が輝いてるんだという意味が込められています。
今回パラブラ映画部を立ち上げたんですが、私たちとしても、やっぱり作品一つ一つを丁寧に届けていきたいなという思いからスタートしていて、そこにこのテーマがすごくリンクするなというところもありました。第一弾の配信作品がこの作品になるというのは嬉しいなと思いながら、今回使わせていただいてます。

 

障害者の映画見るんだったら、こういうものから先に観てみてよ

(蒔田)今日は横浜の家から参加しています。私は視覚障害者です。見え方を説明しなきゃいけないかなと思うんですけれど、全盲です。
もしこの映画に、音声ガイドがつかなかったら、これ何?って、私最初に思っただろうなと。何をテーマにしているのっていう感じで。音声ガイドや字幕が付くことによって、よくわかるようになるものがこの映画の中には随所あったと思うんですね。作業所で描いている作品を紹介したりとか、日常生活を紹介しているものなんだなっていうのが、音声ガイドを通してはっきりわかるようになったっていうことが一ついいことなんじゃないかと思いました。
もう一つは、障害者をテーマにした映画っていうのは、すごくなんか、美化されていたりとか、見えないんじゃこんなことやんないよっていうようなものが含まれているものが多くて、私からしたら障害者をテーマにした映画なんて絶対観ないって感じなんですけれども。
今回びっくりしたのが、男性。シゲちゃんっていうのかな。女性の水着ばっかり書いてて、あんたこれで普通の社会にいたらやばいよって。女の水着にどれだけ興味あるのって。やはりここは普通の人と違いますよってところじゃないかなっていうのを、リアルに説明してくれて、これが一番良かったじゃないかと思います。
障害者の映画見るんだったら、こういうものから先に観てみてよって他の人に言えるんじゃないかと思います。

(山口)私もやっぱりこの映画で一番、自分が興味を持った人っていうのはシゲちゃんだったんですけど。もうまず、最初の登場のシーンで自転車に乗って自分はこんな人が好きでミニスカートが~とかすごい勢いで言いながら出てくるシーンが印象的で。なんか、すごい楽しそうだなって思ったんですね。普段思ってることは内に秘めてることが多いと思うんですけど、アートにして放出していくっていうのが楽しそうでうらやましいなって思いました。

(持丸)私は障害のある方が書くアートってものすごいことをしているんじゃないかっていう思いがもともとあったんですね。でも、例えばこの子供の絵のように見えるのは、やっぱり子供の書いた絵に見えていて正解なんだなっていうことをに気づいて、そこからまた作品をまっすぐに見るようなきっかけになったような気がします。また、書いている人たちは楽しいだけではなくやっぱり人生を背負って、その末に楽しみを見つけたんだなっていうことも面白かったです。シゲちゃんの話だとか、嘉彦さんが時々つぶやく「情けない」っていう言葉だったりとか。私はあまり障害のある方と関わらずに過ごしてきたんですけれど理解のきっかけになったし、作品もまた新しい面に気づかされるような面白い作品でした。

(桑山)ひとくちにアートといってもいろんな作家性があって、純粋にそこがおもしろいなと思いました。あと冒頭にはたよしこさんが「こんな勢いで作品を書いたことはない。」とおっしゃってたところもあったんですけど、皆さんの集中力というか、作るときは別みたいなのが、すごく感動して、そこと普段の家族の方とかと接しているときの砕けた感じだとか、いろんな面が見れて、すごく面白く観させていただきました。

映画カフェのオンライントークの様子

テーマは「アート」じゃなくて「生活」

(山上)関根さんにこの映画の感想を聞くっていうのもちょっと変な感じだとは思うんですけれども、よろしければ関根さんの方から映画との関わりっていうことと、それから当時の話をまずは少し聞ければなあと。いかがでしょうか。

(関根)蒔田さんの話に出てたんだけれども、23年前。こういう映像を出すっていうこと自体がご法度。障害者を見世物にしてるとかいう時代ですね。
施設っていうのは作業やるところだってみんな思ってますので。遊ばせてて何になるんだっていうご感想が圧倒的に多かったですね。ましてやシゲちゃんなんてアートでも何でもないみたいないじゃないかみたいなところで、僕もシゲちゃんを出すにあたって本当にドキドキしながら、これ出して、今で言えば何か炎上しちゃうんじゃないかみたいなね。大批判食らうんじゃないかなって思いながら、かつ、大批判来ないかなっていうのも期待しながら、撮ってもらってましたね。でも、そのマイナス面よりも、とにかくちょっとシゲちゃんを有名にしたかったので、不安で迷いましたけれども、撮ってくださいっていう感じでした。
佐藤真監督もすごく迷ってて。障害者が絵を描くっていうのを映像に撮って、どういうふうに映画にしていいかわかんないっていうのを僕に漏らしてたんですけど、僕がシゲちゃんの話をしたときに、彼らは障害者でありアーティストなんだけれども、その裏にはいろいろな生活を背負って生きているんだっていうのが表せたら、いいよなっていうことで、撮り始めた映画なんですね。なので、別に障害者アートを紹介しようとしているわけではなくて、彼らが抱えている裏の生活を秘めながら絵を描いてるんだっていうところを撮りたかったというふうにおっしゃってましたね。

関根さんの様子

映画に登場するシゲちゃんの挨拶や手紙については参加者一同びっくりするような裏話も紹介していただきました。今は「studioCOOCA(スタジオ・クーカ)」という福祉施設を運営する関根さんの「福祉哲学」は必見です。長いレポートですが、ぜひ最後までお楽しみください!

このつづきは、Palabraのnoteで!